研究概要 |
ラット脳組織からDNAを抽出し, 制限酵素Hind IIIで切断して370塩基対(bp)断片を得た. E.coli DNA polymerase I(Klenow fragment)でα-^<32>P-dATPを末端標識した. Hae IIIで再切断し, 203pbおよび167pbの末端標識断片を分離し, 8%polyacrylamide-50%urea gelで泳動して, オートラジオグラフィを作成した. これらの断片の塩基配列はMaxam & Gilbert法の塩基特異的部分分解と対応させて検討した結果, ラット脳腫瘍の塩基配列はrat satellite DNA Iとほぼ一致した. 若年(生後約1ヵ月以内)および老齢ラット(生後約1年)の脳組織はともに特異的なDNA損傷が見られず, また, piperidineによるAp/Au部位, M.luteus抽出液の硫安分画による種々の修飾および損傷DNA部位の解析からも, DNA損傷は検出されなかった. したがって, ラット脳組織ではかなりの高齢に至るまで損傷が形成されないか, あるいはDNA損傷からの回復能が示唆された. Hind IIIとHae IIIで得られた高頻度反復DNA断片と抗癌剤とのin vitroの反応では, ACNUおよびMCNUが100μM以上の濃度でguanineの位置に一致して鎖切断を起こした. 鎖切断はpiperidine処理で増強されるため, Ap/Au sites, alkali-labile sitesの存在が推定された. 抗癌性抗生剤であるbleomycinはguanine-cytosineおよびguanine-thymine配列を選択的に損傷し, neocarzinostatinではthymineとadenineが主に損傷された.
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