研究概要 |
切開能に優れたCO_2レーザーと凝固能に優れたYAGレーザーの単独及び同軸複合照射において, レーザー照射野周辺脳組織の水分含有量を脳比重測定法を用いて観察する事で, 各種レーザー照射後の細胞毒性および血管原性浮腫について検討を加えた. その結果1.白質における水分含有量の増加はYAGレーザー>CO_2とYAGレーザー同軸>CO_2レーザーの順である傾向が認められた. 2.灰白質における水分含有量の増加はYAGレーザー>CO_2とYAGレーザーの同軸>CO_2レーザーの順である傾向が認められた. 3.CO_2レーザーとYAGレーザーの同軸複合照射の場合水分含有量の変化から推量すると白質に与える影響はCO_2単独照射の場合のそれに類似していた. 我々はすでにYAG単独照射の場合他の二者と比較して灰白質における浮腫層の広がりが広範である事を指摘してきたか, 白質における水分含有量の増加が他の二者に比べ大である事から白質においても広範囲に浮腫層が広がっていると考えられる. これはすでに指摘されているように YAG単独照射の場合光学的散乱が強いためと考えられる. CO_2単独照射の場合灰白質における水分含有量の増加が他の二者と比較して軽微であるのは散乱が無視できる程微少であるといった特性を裏付けるものである. CO_2/YAG同軸複合照射の場合, 灰白質及び白質に対する水分含有量の変化がCO_2単独照射の場合のそれに類似しているといった結果はCO_2の成分が脳の組成を変化させて散乱が起きにくくなっているためであろうと考えられる. 又この結果はCO_2/YAG同軸複合照射を臨床的に応用する際に周辺脳実質に対する影響が比較的少ないことを示唆するものと思われる. 今後はレーザー照射中, 直後の周辺脳血流の変化をレーザードップラー血流計にて観察を行う, 又レーザー照射における熱作用の少ない装置の開発も行う予定である.
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