研究概要 |
昭和61年度に達成できた研究実績について以下に述べる。 1.ヒト大脳悪性脳腫瘍患者未治療例での浸潤細胞の検討 未治療患者8例13標本を用いて免疫組織化学的方法により検索を行った。浸潤細胞は、腫瘍組織内の血管周囲に限局して認められ、T-cellが主体であった。B-cell,マクロファージ,NK細胞はいくつかの標本でごく少数認められるだけであった。Tリンパ球亜群の検索ではcytotoxio/suppressor,helper/inducer Tリンパ球の両者が混在し浸潤していた。Leu-3a/2a比は各症例により差がみられたが、健常人末梢血平均値に比べ低値を示す標本が多かった。 2.悪性脳腫瘍内OK-432局所投与組織での検討 ヒト大脳悪性脳腫瘍患者7例に、OK-432を局所投与し投与後の組織変化を経時的に検討した。局所投与後3日および7日目の組織ではOmmaya's tube周囲1-2cmの腫瘍組織は凝固壊死に陥っており、著明なTリンパ球,多核白血球,マクロファージの浸潤を認めた。局所投与後14日目の組織では、凝固壊死巣と多数のTリンパ球浸潤を認めたが、多核白血球,マクロファージの浸潤はほとんど認められなかった。Tリンパ球数は未治療組織の約1000倍であった。Tリンパ球亜群の検討ではいずれの時期においてもcytotoxic/suppressor,helper/inducer Tリンパ球の両者が多数混在し浸潤していた。Leu-3a/2a比は未治療群同様各症例により差がみられたが、健常人末梢血平均値に比べ低値を示す標本が多かった。これらTリンパ球は細胞間相互作用により腫瘍細胞に免疫応答している可能性が示唆された。今後、浸潤細胞を腫瘍組織より取り出し、その機能を検討することによりOK-432局投与による抗腫瘍活性発現機序を更に詳細に解明する予定である。
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