研究概要 |
1.下垂体組織に於けるプロラクチン(PRL)mRNA及びPRLの同一切片上での検出: ラット下垂体の凍結切片を用いてPRLを酵素抗体法により検出した後, In Situ Hybridization(ISH)法を用いてPRL mRNAを検出した. この方法はホルモンの合成及び貯蔵を組織学的に同時に観察し得る点で優れているが, ISHによるback groundが高く, さらに方法の改良が必要と考えられた. 2.エストロゲン(E)誘発ラットPRL産生腫瘍に対するブロモクリプチン(B)の効果: Eを5週間投与するとCytoplasmic Dot Hybridization法により測定した下垂体当りのPRL mRNA量は, コントロール群の約6.5倍に増加した. 一方ISH法を用いた検討により, PRL mRNAの増加はPRL産生細胞の増加及び一細胞当りのmRNAの増加によることが明らかになった. E刺激群へのBの投与は, 下垂体当りのPRL mRNA量を67%に減少させた. 一細胞当りのPRL mRNAについてみると, 減少の著明な細胞と軽度の細胞の2種類が認められ, 細胞の反応性のheterogeneityを窺わせた. このように, ISH法は細胞レベルでのmRNA解析に有用な方法と考えられた. 3.Silent Corticotroph Cell Adenoma(SCCA)におけるACTH前駆体mRNAの発現の解析:SCCAは血中ACTH高値を認めるにも拘らず, 臨床的にはCushing症候を示さない下垂体腺腫である. 我々はその1例とCushing病(CD)の3例から得られた下垂体腺腫におけるACTH前駆体遺伝子の発現を検討した. RNA Dot法による解析では, このSCCA中のmRNA量は単位重量当りではCDの1/64以下であったが, 腫瘍がCDより著明に大きいため, 全体量はCDと大差なかった. Northern Blot法によるACTH前駆体mRNAの解析より, SCCAとCDのmRNAの大きさは等しく, S_1マッピングにより, coding regionにおけるpoint mutationも無いことを証明した. 以上の結果, SCCAの発現機序としてpeptide processingの異常やホルモン分泌障害等が示唆された.
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