研究概要 |
ウシ脳血管のヒスタミン受容体(【H_1】,【H_2】)について薬理学的解析を行った。摘出ウシ脳底動脈を用いて1×20mmのラ線状標本を作製し、37℃のkrebs-Ringer液95%【O_2】+5%(【CO_2】)20mlを含むオルガンバス中に懸垂し、ひずみ圧トランスデューサーに接続して等尺性張力を記録した。ヒスタミン及び【H_1】,【H_2】のagonistならびにantagonistに対する脳血管反応性を検討した。(1)ウシ脳血管はヒスタミンと2-PEA(【H_1】agonist)に対して用量依存性の収縮を示したが、Dimaprit(【H_2】agonist)には反応しなかった。(2)ヒスタミンによる用量収縮曲線はtripelennamine(【H_1】antagonist)によって右方へ平行移動したのでcompetitiveな拮抗作用と考えられた。Tripelennamineの拮抗作用をSchild plotで解析すると、そのp【A_2】値は0.812,slopeは0.941であった。(3)Cimetidine(【H_2】antagonist)はヒスタミンによる用量収縮曲線に影響を及ぼさなかった。(4)【PGF_(2α)】で脳血管を収縮させた後にヒスタミンやdimapritを授与しても弛緩反応は認められなかった。(5)ヒスタミンの収縮反応はαあるいはβ拮抗薬の影響は受けなかったので、交感神経終末からのノルエピネフリン遊離によるものではなく、【H_1】受容体への直接作用と考えられた。 結論:一般に【H_1】は血管を収縮させ、【H_2】は弛緩させる。【H_1】と【H_2】の分布や密度は種属や臓器によって差が認められる。(1)ウシ脳底動脈には【H_1】受容体が密に存在し、収縮反応をおこす。(2)ウシ脳底動脈には【H_2】受容体が欠けているか、あるいはあっても機能していないと考えられた。 今後、更に病的脳血管におけるヒスタミン受容体の変化について研究する積りである。
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