頭蓋内圧・圧波の出現は脳幹の機能不全と密接に連関しており、また圧波が出現するとその反復と共に脳に重篤な虚血性変化をもたらす。本年度は[I]カオリン水頭症ネコを用いHypothalamusの破壊巣、glutamate、Ach等の微量注入の頭蓋内圧に対する効果[II]クロラロース麻酔ネコを用い第4脳室を露出した標本を用いLocus Coeruleus complex(LC)からchorinoceptive pontive Area(CPA)への入力様式を詳しく調べた。 [i]Hypothalamusの破壊、薬物注入の頭蓋内圧に対する効果: (1)Hypothalamusに金属針を2ー3回刺入することによって極小さな破壊巣を作製するとプラトー波状の頭蓋内圧の上昇がみられ、時に血圧の上昇を伴った。 (2)Achの微量注入をおこなうと血圧の下降と共に頭蓋内圧は一時下降するが直ちに再上昇に移り、時に圧波状の頭蓋内圧上昇が惹起された。 (3)Glutamateの微量注入ではこれまでの実験では圧上昇は惹起されていない。 [ii]LCからCPAへの神経結合の有無: (1)CPAから単一ニューロンの自発発射を記録しながら、同側あるいは対側のLCにelectrical microstimulationを加えると、100〜400m secの間スパイク発射は抑制された。これらCRAニューロンの脳幹内分布を調べ、橋内をrostro-caudalに比較的広範囲に分布(正中より2mm lateralで)していることが判明した。LCから抑制性入力を受けるCPAニューロンには前肢及び後肢の知覚神経より、早期の弱い促進とその後の強い抑制性入力が観察された。 以上これまでの実験結果と合わせ考えるとLCとCPAとの間には相互抑性機構が存在し、更にhypothalamusを加えた三者が頭蓋内圧・圧波の発現に密接に関与していることが推察される。
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