研究概要 |
1.骨成長因子の精製: 股間接形成術の際に摘出した大腿骨頭を材料とした. 10%EDTAで脱灰, 非コラーゲン蛋白質を抽出し, 以下の順序で精製した. (1)アセトン処理, (2)ゲル濾過(HW50FとSepliadex G75 superfine)(3)イオン交換クロマトグラフィ(Mono Q)(4)3回のHPLC. これら各段階における活性測定法は, 14日目の鶏卵胎子頭蓋骨から骨芽細胞を分離・培養し, テストサンプルを作用後, ^3H-チミジンの取り込みを測定することによって行なった. 各精製段階における比活性をみると, Aceten処理では2.2倍に, HW-50Fでは8.5倍にG-75では42倍に, Mono Qでは110倍に, そして, HPLCでは725,000倍であった. この最終精製標品はSDS電気泳動で単一のバンドを示し, 分子量は15,000であった. また, ^3H-チミジンの取り込みは濃度依存性に増加し, 0.1ng/mlで最大活性値を示した. (対照群に比較して95%増の値であった. ) 2.本因子の生物学的性質: この性質に関しては, 骨原性細胞株MC3T3E1細胞を用いて実験した. (1)アルカリフォスファターゼ(ALP)活性は濃度依存性に増加し, 0.1ng/mlで最大活性値(対照群に比べ95%の増)を示した. (2)コラーゲン合成は濃度依存性に増加し, 0.1ng/mlで最大活性値(対照群に比べ84%の増)を示した. 以上, 本年度はヒトの骨基質から骨芽細胞を増殖させる因子を精製した. そして, その因子はこれまで報告されている成長因子とは異なる新しい物質(蛋白質)と考えられる. 本因子はALP活性およびコラーゲン合性には促進する作用を有している. 細胞の分化機能にも影響を及ぼす本因子は, 骨のリモデリング, 特に骨形成作用を促進するものと考えられる.
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