研究概要 |
骨量は骨吸収と骨形成の相対的な割合いによって左右されている。近年、骨形成を促進するいくつかの成長因子が報告されている。本研究の目的は、1)ヒト骨基質より骨芽細胞を増殖する因子を精製する。 2)そのアミノ酸配列を決定する。 3)本因子と種々の骨代謝疾患との相関についての検討をする。ことである。 I.成長因子の精製およびその構造 ヒト大腿骨頭を用い10%EDTAにて非コラーゲン蛋白質を抽出し、精製を進めた。なお、その活性は鶏胚頭蓋冠より骨芽細胞を分離・培養し、その細胞のDNAに取り込まれる^3H-チミジンを測定することによって行なった。 1.精製方法 1)アセトン処理 2)ゲル濾過 HW-50FおよびSephadex G-75のカラムを用いて行なった。 3)イオン交換カラムロマトグラフィ 4)逆相高速液体クロマトグラフィー 2.精製結果 約50個の骨頭から3370mgの蛋白質が抽出され最終精製物は、3.6μgであり、精製倍率は4830倍であった。最終精製物を20%SDS-ポリアクソルアミドゲル電気泳動を行い、銀染色したところ分子量約6,000に相当する部分に単一のバンドが認められた。さらに、エドマン分解法を用いてアミノ酸配列の解析を行った結果、N端末から30番目までヒト血清由来のIGF-IIのアミノ酸配列と全く一致していた。 II.骨粗鬆症と骨の成長因子骨 粗鬆症の病態は骨形成と骨吸収の不均衡によって生じ、骨吸収とそれに引き続いておこる骨形成のUncouplingの状態と理解される。このUncouplingの原因としては骨基質内に存在し、局所産生性因子の機能不全を考慮しなければならない。今回精製されたIGF-IIと骨代謝の関係を明らかにすることは骨粗鬆症の病態理解およびその治療に通じることは十分に推測できる。
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