研究課題
骨を伝導する音波を分析することにより、骨折の治癒過程あるいは偽関節を診断し、そこに一定のパターンが得られれば、日常の診療においてこれを十分に活用出来ると考え、動物実験ならびに臨床例に関して検討を重ねてきた。この骨伝導音検査法は高精度が期待でき、しかも生体無侵襲であるため、反復検査が可能な方法であり、従来のX線検査におけるX線被曝量の軽減をはかることができる。昭和61年度の設備購入は骨伝導音自動発生装置(黒田精工KDS-10)である。現在本装置の実用性、精度等に関して他の方法との比較検討を行なっている。骨伝導音検査に関する研究は昭和59年度科学研究費助成以来の一貫した研究である。骨伝導音検査法の開発過程に関し、昭和61年7月、第12回骨折研究会では創外固定器により治療した骨折の臨床例につき報告し、創外固定器除去時期は、ピーク周波数が150-200Hz以上になった時点であることを明らかにした。昭和61年8月、第1回日本整形外科学会基礎学術集会では犬を用いたセメントレス人工股関節の固着性に関する動物実験結果より、ピーク周波数と人工関節の固着性は二次関数的に相関すること、昭和61年11月の第13回股関節研究会では、セメントレスTHRを施行した臨床例につき検討し、セメントレスTHRの固着性に問題が生ずると、ピーク周波数は術後荷重を開始する10週頃よりしだいに低下することを報告した。そして昭和62年3月の第7回バイオトライボロジシンポジウムでは、骨伝導音検査による人工関節弛緩の診断に関して総説的に述べた。このように骨伝導音検査は人工関節の固着性や骨折の治癒過程を定量的に知り得るひとつの指標となりうることを明らかとした。現在、犬を用いて大腿骨骨幹部を実験的に骨折し、各種内固定材料により骨折部を固定し、経時的に骨伝導音検査を行なっている。
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