骨折の診断に単純X線写真が欠くことの出来ない有力な武器であることは言うまでもない。しかしX線像のみでは骨折の治癒過程を完全に把握出来ないことはしばしば経験する。そこで骨を伝導する音波を分析することにより、骨折の治癒過程あるいは偽関節を診断し、そこに一定のパターンが得られれば、日常の診療においてこれを十分に活用できると考え、基礎的・臨床的研究をおこなった。その結果、創外固定器を用いた実験的骨折では、骨折後週数とピーク周波数の間には有意の相関がみられ、骨癒合強度とピーク周波数値は明らかな相関を示した。また内副子固定例では伝導音波形、ピーク周波数ともにX線所見との対応がつかず、骨癒合強度とピーク周波数値との間にも著明な相関性は得られなかった。そして動物実験・臨床例ともに骨折後週数とピーク周波数間には有意の相関がみられた。また臨床例における経時的観察より、週数の経過とともにピーク周波数が漸増する「漸増型」、一旦ピーク周波数は低下し、その後再び上昇する低下・再上昇型、ピーク周波数に変化を認めない無変化型、ピーク周波数は一時漸増傾向を示すかあるいは変化を認めないが、その後次第に低下してくる低下型の4型があることが分った。漸増型と低下・再上昇型は保存的治療群と創外固定群に多く認められ、骨癒合過程が本検査により診断可能な例であり、無変化型は髄内釘や内副子などの内固定材を用いた臨床例に多くみられ、本検査による診断が困難な例であることが分った。さらに低下型は偽関節あるいは遷延治癒骨折例であることを明らかにした。そして骨伝導音検査による創外固定器の除去時期の判定基準を定めた。
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