これまで、コミュニケーション障害を有する重度身体障害者のための福祉機器に関するニード調査および機器開発を進めてきた。 われわれが臨床的にこれらのコミュニケーション機器を応用した症例は、脳性麻痺、進行性筋ジストロフィー症、頸髄高位損傷であった。 脳性麻痺症例は四肢体幹の不随意運動を伴う機能障害にあわせて、重度なる構音障害を合併し、一般の手段では書字・言語による表現が困難である症例が多い。 進行性筋ジストロフィー症例や頸髄高位損傷例では、上肢の筋力低下または神経麻痺により運動機能は極限られた動作しか遂行し得ない。また、一部の症例では呼吸管理のため気管切開が施されていて、自発言語も不可能である。 以上の症例は長期にわたり意志の伝達が意のままにならず、一方的かつ受動的なケアのもとにおかれることが多い。 生活動作においては全面的なケアを受けながらも症例の精神活動は正常に働いているため、この精神活動を援助する手段を講じることはリハビリテーション医学の重要な課題と考えた。症例に意志表現手段に対するニードがある場合には、われわれがこれまで開発してきたコミュニケーション機器を利用することにより、十分対応できるに至っている。本機器の利用時に症例の残存能力を分析することが重要であり、残された機能を有効的に活用して入力装置を操作させるインターフェイスや入力装置の工夫が症例ごとに必要であった。臨床応用では、それぞれの障害を持った在宅症例や入院の症例に使用した。その結果、文作活動・コミュニケーション機能を援助し症例のQOLを高めて手段となり得ることがわかった。
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