研究概要 |
1.ラット膝関節内への発癌剤注入により発生した悪性線維性組織球腫(ラットMFH)に関して、形態学的および酵素組織化学的検討を行った。電顕にて腫瘍細胞は形態的に、組織球様細胞,線維茅細胞様細胞など数種類に分類された。組織球様細胞はラテックス粒子貧食能を有し、酵素組織化学的検索にて組織球の特徴を示した。以上の点はMFHの組織発生に関して、大きな示唆を与えるものと考えられる。 2.ラットMFHに対する制癌剤の効果を検討した。制癌剤(アドリアマイシンなど)投与群では非投与群に比べ、著るしい増殖抑制が認められ、また組織学的には、腫瘍細胞の壊死が広範に認められた。これにより本腫瘍が制癌剤に対し感受性をもつことが明らかとなった。次に制癌剤の効果をより定量的に観察するために、核磁気共鳴法にて分析し悪性指数を算出した。その結果、制癌剤投与にて有意に指数は減少を示した。これは組織学的変化を反映していると考えられ、本法により、制癌剤の有効性を判定できる可能性を示している。今後、検討薬剤の幅を広げ本法の有用性およびその応用につき、さらに検討する予定である。 3.ラットMFHの試験管内継代株を作成中である。これを用いることにより多数の薬剤をより簡便に検討することが可能となるとともに、その形態学的変化も容易にとらえることができる。長期継代株の樹立は未だ成功していないが、培養条件の検討により可能であると思われる。今後まず試験管内培養継代株の樹立を目ざし、これを用いて制癌剤の殺細胞効果および細胞の形態学的変化を検討し、生体内と試験管内における薬剤効果の相関性や相違点について、明らかにする予定である。
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