鹿児島県における慢性関節リウマチ(RAと略す)の血清疫学的調査の第一段階として、初年度は県北部の吉松町と県南部離島の南種子町の2地区にて、両町のRA患者有病率の予備的調査及び、吉松町の住民いわゆる一般健康人集団における血清RA因子出現様式と当科にて加療中のRA患者の発病年令との比較検討を試みた。 吉松町は総人口4798人で現在までに直接検診し得た住民は3200人である。definite RAと診断された住民は14人有病率は0.29%であった。南種子町の総人口は8320人で住民の10%を直接検診し39人のRA患者が見い出され有病率は0.47%となった。また、吉松町の住民3200人の血清IgMRA因子の測定を行った結果その陽性者数は、男性53人(3.4%)女性75人(4.5%)であり女性にやや出現頻度は高いが、両者の間に有意差は認められなかった。これを各年令層毎にその出現頻度を求めると、男女とも有意に加令とともにその出現頻度は増加した。今年度のRA有病率の調査では、両地区間には大差はなく、また本邦におけるRAの有病率は0.3%と言われ、当県と北部他県における調査結果と有意差は認められなかった。しかし、RAを否定し得ぬものに対し次年度以降調査を続行し、新規発病者や軽症患者の発見につとめる予定である。 また、吉松町における3200人のいわゆる一般健康人のRA因子出現様式は加令とともにその陽性率は増加する。一方、われわれが現在加療中のRA患者の発病年令を調査した結果、中年令層に患者は集中していた。以上のことより、RA因子の出現がすべてRAの発症に直接結びつくならば、RA患者の発病も当然高年令層に多いと予想されるが、両者間に相関々係は認められなかった。すなわちRA因子にはRAの発病に直接結びつくものと、単なる加令現象のひとつと認められるものとが存在するのではないかと推察された。
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