研究概要 |
昭和61年度より慢性関節リウマチ(以下RAと略す)の血清疫学的調査として, 鹿児島県北部の吉松町と県南部離島の南種子町の2地区におけるRAの有病率及び一般健康人集団としての血清リウマトイド因子(以下RA因子)出現様式を調査検討して来た. 今年度は県南部肝属地区の住民検診及び老人検診で得られた血清のRA因子を測定検討した. 前年度研究経過で報告した様, 肝属地区3416人の住民血清にてはRAテスト陽性者数は156人(4.6%), RAHAテスト陽性者数は160人(4.7%)であった. RA因子陽性者における臨床及びX線所見の検討と高抗体価血清の家系調査とを今後行う目的で今回は特に肝属地区の近接占町(根占町, 大根占町)について測定結果をまとめた. 対象は男性695人, 女性1400人の計2095人で年令は40才〜90才であった. RAテスト陽性者は男性26人(3.7%), 女性63人(4.5%)で女性にやや出現頻度は高いが両者間に有意差は認められなかった. 各年令層毎にその出現頻度を求めると男女とも有意に加令とともに増加した. RAHAテスト陽性者数は男性26人(3.7%), 女性72人(5.1%)と有意に女性に高かったが年令層における出現頻度には一定の傾向は認められなかった. RAテスト及びRAHAテストと共に陽性を示した者は68人(3.2%)存在した. RAHAテスト陽性者98人中57人(61%)はその抗体価は80倍であった. RAHAテスト陽性者の85%は抗体価が80倍及び160倍の者で占められていたが, 中には1280倍と高値を示した者も散見された. 一般にRA因子検査にて70%程RAの診断がつくといわれているが, 今後同地区においてRA因子陽性者の臨床所見を検索することで, 両検査のスクリーニングテストとしての有用性をRetrospectiveに検討し又高抗体価例の家系調査を行いHLA等の免疫遺伝学的解析を行う予定である.
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