鹿児島県における慢性関節リウマチ(RA)の血清疫学調査として昭和61年度に県北部の吉松町と県南部離島の南種子町にてRA患者有病率の調査と当科にて加療中のRA患者の発症年齢との比較検討を行った。吉松町(総人口4791人)では3200人を直接検診し得、そのうちRA患者14人(有病率0.29%)であり、一方南種子町(総人口8720人)の住民の約800人(10%)に直接検診を行い、39人のRA患者(有病率0.49%)を認めた。また、吉松町の住民3200人に対し血清IgMRA因子の測定を行った結果、男性53人(3.4%)、女性75人(4.5%)であり、女性に出現頻度が高いが男女間の有意差は認めなかった。各年齢層では男女とも有意に加齢とともに陽性率が増加した。RA患者の発病年齢と一般健康集団を比較したところ、RA因子にはRAの発病に直接が結びつくものと単なる加齢現象の1つとして認められるものとが存在した。昭和62年度には肝属地区(根占町、大根占町)で得られた住民血清2095(男性695、女性1400)についてRAテスト、RAHAテストを行いその出現頻を調査した。RAテスト陽性率は4.2%(男性3.7%、女性4.5%)、RAHAテスト陽性率は4.4%(男性3.7%、女性5.1%)と吉松町の結果と同様男女間にはその出現頻度に有意差は認めなかった。また、RAテストは年齢依存性が認められたが、RAHAテストには年齢依存性は認められなかった。さらに昭和63年度は同地区でいづれかのテストが陽性を示した住民119人を対象にアンケート調査を行い、68人中4人のRA患者を見出した。残りの64人のうち16人に対しHLA分析を行った。HLA抗原A、B、C、DR群とも日本人一般集団の出現頻度と大きな差異は認められなかった。したがって、健常者におけるRA因子陽性の臨床的意義はRAにおけるものと異質のものである可能性が強い。
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