1.前角細胞直径と核小体直径の相関:両者の関係は一次式で表され、かつその相関係数は0.98〜0.99間にあり、極めて強い正の相関関係にあることがわかった。即ち、頚髄前角細胞の大きさの比を求める場合、核小体直径の比を求めればよいことが判明した。 2.脊髄の前額切片鱗標本は横断切片標本に較べ、同一切片内に多数の脊髄前角細胞を含み、一切片内で多数の核小体直径を計測が可能であるという利点を有する。しかし、変形した脊髄での計測には前額切片標本より横断切片標本のほうが適していると考えられる。 3.核小体法を用い、ヒトのC7髄節のRexedIV層外側核運動細胞構成の加令的変化および圧迫性頚髄症における前角細胞構成比を調べた結果、以下のこと明らかとなった。 (1)特に脊髄病変を有しない症例では経年的に変化する代表的な3つのhistogram patternが存在すると思われた。(a).10歳以下では脊髄前角細胞数は核小体直径4μにpeakを持つ1峰性のhistogram、(b).10歳代の後半から50歳代にかけては3.5〜4μおよび5μにpeakを持つ2峰性のhistogram、(c).60歳代以降は5μにpeakを持つ1峰性のhistogram、(d).しかし各年代とも代表的patternの他に別のpatternの存在も認められた。 (2)頚髄前角細胞群内には、経年性に変化する大および小細胞の2群が存在し、脊髄老齢化に従って小細胞群が脱落していく傾向が示唆された。 (3)RA頚椎病変よにく頚髄圧迫性部での病的変化では、全体として頚髄前角細胞は減少するが、小細胞よりむしろ大細胞に脱落傾向が強く経年性変化とは異なるpatternの存在の可能性が示唆された。
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