我々は以前より関節炎におけるカテコラミン受容体の検索を行い、慢性関節リウマチでは滑膜および末梢血リンパ球B受容体の機能低下がみられ、さらに受容体数の著明な減少を認めた。このことは慢性関節リウマチ患者における受容体自己抗体の存在が考えられ、今回の検討を行った。 正常人と慢性関節リウマチ患者より血清を採取し、それぞれの受容体結合に対する影響を検討した。まずBinding assayとして、α受容体に関してはヒト血小板を受容体標本とし【^3H】-Yohimbineとの結合を調べ、その際特異的結合をみるためにpropranololを使用した。β受容体については、モルモット肺と【^3H】-Dihydroal prenololとの結合をみ、phentolamineによる特異的結合の判定をおこなった。さらにBioassayとして、モルモット心臓を用いisoproterenolに対する心拍数、心収縮増加というβ受容体依存作用における血清の影響も検討した。 まずα受容体については、Binding assayの結果、慢性関節リウマチ患者血清は有意の結合阻害作用を認めなかった。β受容体に関しては、Bindingassayにより、15例の患者血清の内8例に有意の結合阻害を認めた。Bioassayでは、基礎実験において同一血清を用いてもその結果にばらつきがあり、信頼性に問題があるため現在条件設定を改善検討中であるが、15例中やはりり5例に阻害作用を認め、この5例は先のBinding assayで阻害を認めた同一症例であった。これらのことより、慢性関節リウマチ患者血清の中にβ受容体結合阻害を示す例があることは明らかであり、これが自己抗体によるものかどうか現在Protein-A結合等の追加実験中である。また、今回の臨床例の検討では全症例で薬物治療を受けており、これら薬物の受容体に対する作用も否定できないが、動物モデルの検討を現在行っておりそれによってより明らかになると思われる。
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