研究概要 |
1 ガラクトースアミンによる急性肝不全ラットにおいては, 細網内皮系(RES)貧食能に関与する各因子の低下によりRES貧食能は低下しているとの昭和61年度の研究成果をふまえ, 急性肝不全ラットにおけるRES貧食能低下に関与する各因子に対する治療法を試みた. 2 これら急性肝不全ラットにKupffer細胞をふくむ肝細胞内ミトコンドリア機能改善の目的でATP-MgCl_2を投与し, 肝細胞内ミトコンドリア機能の指標である動脈血中ケトン体比(AKBR)の変化を検討したところ, AKBRの改善がみられ, RES貧食能も改善された. 3 またこれら急性肝不全ラットに非特異的免疫賦活剤であるOK-432を投与すると, RES貧食能は改善された. かかるOK-432の有効性の機序としては, 我々の現在までの研究成績より考えて, OK-432によるKupffer細胞自体の賦活, 及びopsonin蛋白の量的, 質的改善が考えられた. 4 以上のごとく, ATP-MgCl_2及びOK-432の投与により, 急性肝不全ラットにおけるRES貧食能は改善され, また救命率も改善された. したがって急性肝不全における全身状態の増悪の機序のひとつとして, RES貧食能低下による感染症の併発力, spillover現象による多臓器不全(MOR)が考えられることにより, 各種の血液浄化法による人工肝補助装置による治療を行うとともに, PES機能賦活を行うことは有効であることが示唆された. これらの結果をもとに, 未だ低い救命率を改善すべく, 急性肝不線及び肝硬変急性増悪例において, ATP-MgCl_2及びOK-432によるRES機能賦活療法を試みる予定である.
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