研究概要 |
平滑筋は生体内部環境の恒常性維持に大きな働きをしているが、血管平滑筋は、その中で循環保維の面で主に、その役割をはたしている。近年、血管内皮細胞の血管平滑筋に対する関与が注目されるようになり、従来の標本全体を灌流液に浸してしまうin vivoの実験系での反応は、in vivoとかなり異なったものをみていることが、より明らかとなった。それ故に、血管腔内外に、各々薬剤を投与した場合の反応性の違いの有無をみることを研究の主題とした。反応性については以下の薬剤による張力発生の違いを指標とした。(1)Norepinephrine(2)Carbachol(3)prostaglandin 【F_(2α)】 【E_2】(4)灌流液のK濃度を40mMとする。今年度は、ヒト大伏在静脈を、ラセン状に巾1.5mm,長さ10mmの標本とし、従来の方法での上記薬剤による反応性を確認し、以下の結果を得た。(1)ヒト大伏在静脈は、Norepinephrine(【10^(-5)】M),40mMK,で大きな緊張性張力を発生する。40mMKで収縮している標本にNorepinephrineを加えると、さらに張力が増大するので40mMKとNorepinephrineとでは張力発生機序が異なると推測される。(2)Carbacholは高濃度で張力を発生させるが、その張力は40mMKの10%位である。(3)Prostaglandin【F_(2α)】【E_2】ともに張力を発生させるが、その張力は律動性成分の多いものである。しかも、この張力は、Krebs液中で自然に発生する張力と性質がよく似ており、Caブロッカーで抑制されるが、Atropine(【10^(-5)】M),isoproterenol(【10^(-6)】M),phentolamine(【10^(-5)】M)で影響をうけないので、Krebs液中で発生する自然張力は内因性prostaglandinによると考えられる。(4)電気刺激をすると張力が発生するが、これはTTX(【10^(-7)】M),phentolamine(【10^(-5)】M)で著明に抑制されるので、神経伝達物質としてNorepinephrineが分泌されていると思われる。この張力発生は、prostaglandin【F_(2α)】を投与すると濃度依存性に増大するので、Prostaglandin【F_(2α)】は、この分泌,受容体レベルの機構で、何らかの関与をしていると考えられる。
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