ラット分離肝細胞にハロセン(浅麻酔期、手術至適期、呼吸停止期を作用させ、血中逸脱酵素であるGOTを指標とし、細胞障害の程度を免疫組織化学的に調査した。 GOT抗体はmitochondrial GOT(mーGOT)とcytosolic GOT(sーGOT)を用いた。コントロールでは約80%の細胞が双方のGOTに免疫陽性を示し、ハロセン濃度が上昇すると共に、免疫陽性細胞および免疫陽性度は減少した。しかし、両者の減少過程には相違が見られ、sーGOTが細胞障害初期ですでに著明な逸脱が見られ、手術至適期にはすでに多くの細胞に酵素の逸脱を認めたのに対し、mーGOTは抵抗性を示した。mーGOTは手術至適期相当のハロセン濃度ではかろうじて酵素を保持しているが、呼吸停止期では多くの細胞に酵素の逸脱を認めた。 さらにこれを透過型電子顕微鏡で観察した結果、sーGOTは細胞質全体に均一に分布し、細胞が障害を受けると細胞膜を通じて細胞外に放出されることが判明した。一方、mーGOTはミトコンドリア内のクリステに存在することは判明したが、障害を受けた場合の逸脱経路が末だ明らかにされておらず検討中である。
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