研究概要 |
ラットの肝臓にタンパク分解酵素を作用させ分離肝細胞を得る。これにハロセンを添加し、その血中濃度(浅麻酔期、手術至適期、呼吸停止期)に応じた細胞の変化を走査型電子顕微鏡(以下SEM)と透過型電子顕微鏡(以下TEM)にて調べた。その結果、細胞が障害を受けた場合の表面形態は細胞障害の程度に応じて刷子縁が消失していくのをSEMにて観察し、またその時の細胞内部構造(核、ミトコンドリア、粗面小胞体、滑面小胞体、細胞質)をTEMにて観察し、ハロセン濃度に比例してこれらの障害が増悪していることを確認した。 そして、さらにこれを免疫組織化学的に調査するため、血中逸脱酵素であるGOTを指標とし、2つのGOT抗体(mitchondrial GOT(m-GOT),cytosolic GOT(S-GOT)を用いてハロセン添加後の分離肝細胞に免疫組織化学的染色を施し、光学顕微鏡にて観察した。その結果、正常時における両GOTの存在部位の相違をはじめ、ハロセン添加による細胞障害時における両GOTの細胞外逸脱にも相違のあることを認めた。すなわち、S-GOTは細胞障害初期に早くもその逸脱を認めたが、m-GOTはこれに比べて抵抗性を示した。しかし、呼吸停止期における濃度では両者ともに多大な細胞外逸脱を認めた。そしてこれをTEMにてさらに詳しく調査した結果、S-GOTは細胞質全体に均一に分布し、m-GOTはミトコンドリア内膜、特にクリステに存在していることが判明した。我々はこの研究の核心であるところのGOTの逸脱経路を検討している。
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