笑気を長時間吸入していると笑気の中枢神経作用が減弱する現象、即ち急性耐性が発現することを我々は以前に報告した。その後、中枢神経作用の中でも脳波像及び中脳網様構造の神経電気活動へ及ぼす作用に対しては急性耐性が発現するが、鎮痛作用に対しては発現しないことが明らかとなった。本研究は抗痙攣作用に対して急性耐性が発現するか否か、発現するのであればその時間経過を明らかにすることが目的である。痙攣モデルとして扁桃核燃え上がり痙攣ネコを用いた。痙攣モデルを作成した後に空気吸入を対照として、75%笑気吸入0.5.1.2.5.及び24時間の時点で扁桃核電気刺激による痙攣誘発を行った。その結果、脳波及び行動上は5時間までは笑気の作用が認められ、脳波では律動性徐波を認め、行動上は横たわっていることが多かった。5時間以降は脳波及び行動上の笑気の作用は減弱し、歩行時にふらつきが認められるのみであった。扁桃核燃え上がり痙攣に対する笑気の抗痙攣作用は吸入0.5乃至1時間が最大であり、以後は笑気の作用が減弱した。ただし、検討した例数が少ないため以上の結果を確定することは現時点ではできなかった。今後、研究を継続して例数を績み確定する予定である。また、笑気の抗痙攣作用が他のどの中枢神経作用(例えば体性誘発電位の抑制作用)と関連し、その経時的変化と相関するか否かを検討する必要がある。
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