研究概要 |
61年度の研究にて判明した手術患者の好中球貪食殺菌能低下の背景因子の内で, 周術期管理において最も重要な1.低蛋白血症合併患者(N=6), 2.肝硬変合併患者(N=4), 3.糖尿病合併患者(N=10), 4.高令(70才以上)患者(N=19)に関し, 手術前後でNitor blue tetrazolium還元反応を用いて, プール人血清のみで刺激をしたもの(E(-))と, これにエンドトキシン50μgを加えて刺激をしたもの(E(+))と2通りの好中球貪食殺菌能検査を行った. これらの合併症を有さない成人手術患者(N=15)について同様の検査を行った. 〔結果〕正常群の貪食殺菌率は術前E(-)で57.9±9.9%, E(+)で90.7±5.7%, 術後E(-)は66.9±8.5%, E(+)で90.3±4.1%でありE(-)において術前より有意に上昇していた(P<0.05). 低蛋白血症群では術前E(-)が33.2±12.0%, E(+)で73.5±15.8%, 術後E(-)は36.3±11.2%, E(+)で74.9±8.8%, 術後E(-)は43.8±12.3%, E(+)で71.3±11.9%であった. 肝硬変群では術前E(-)は34.7±6.2%, E(+)で63.3±8.3%, 術後E(-)は33.3±9.3%, E(+)で63.0±5.8%であった. 70才以上の高令者においては, 術前術前E(-)は46.8±15.5%, E(+)で80.5±12.6%, 術後E(-)は50.9±9.8%, E(+)で81.3±11.8%であった. 以上前述の4背景因子を保有する手術患者は, これらを保有しない成人患者に比し, 術前後においてE(-), E(+)ともに好中球貪食殺菌能は低値を示した. 又手術侵襲という外的侵襲に対する好中球貪食殺菌能の活性化が成人群では術後にみられたが, 本年度において検討した4背景因子を保有する手術患者群においては, いづれの群においても有意な活性化はみられておらず, これらの結果より4背景因子保有手術患者は感染防禦反応閾値の上昇した状態, つまり易感染状態にあるとの考察を行った.
|