研究概要 |
本研究はラットの出血性ショックモデルにおいて、血圧の維持および予後に対する脳内の神経活性物質、とくにニューロペプチドの役割を検討することを目的としており、そのために中枢性に投与されたペプチドが循環動態にどのような影響を与えるか、およびショックに陥った動物の脳内に存在する内因性のペプチドがどのように変化するかという2点について実験を行なった。今年度は特にthyrotropin-releasing hormone(TRH)について検討し、以下のような結果を得、すでに裏面に示した雑誌にくわしい内容を発表(あるいは投稿)した。 1.中枢性に投与したTRHの循環動態に及ぼす影響とそのメカニズム TRHを脳室内あるいは静脈内に投与すると10〜20mmHg程度の昇圧効果が得られ、その効果は脳室内にアトロピンを前投与することにより減弱することから脳内のムスカリニックコリナージックな神経系を介して発現されるものと思われる。末梢においては交感神経系の活動の上昇がみられた。静脈内に投与されたTRHもまた同様の機序を介して作用することから、抗ショック薬としての可能性が示唆された。 2.ショック時の脳内のTRHの変化 可逆性および不可逆性ショックモデルを作成し、経時的に動物を殺して脳内各部位のTRH含量の測定を行なった結果、前者においてはTRH含量の増加がみられたが後者においては逆に含量の低下がみられた。脳内のTRHが抗ショック的に作用している可能性が示された。 以上の結果をふまえて、TRHの中枢性血圧調節作用をさらにくわしく解明するため現在push-pullカニューレを脳内各部位に挿入,環流し、環流液中に遊離してくるTRHの経時的な変化を測定しており有用なデータが得られている。
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