研究概要 |
本年度は除脳イヌを対象として、橋排尿中枢の機能と部位について検討を加えた。対象は体重2〜4kg前後の雑種イヌを使用した。Thiamylal sodium(15-20mg/kg)の腹腔内投与により麻酔を導入し、下腹部正中切開を行ない、膀胱頂部より2腔カテーテルを膀胱内に挿入し、一方の経路から内圧を測定し、他方からは生理的食塩水をできるようにした。筋電図を導出するために2本のワイヤー電極を尿道壁内に刺入した。続いて、手術創を閉鎖して体位を腹臥位に変換して、supracolliculumの高さで除脳を行なった。頭部を脳固定装置に固定し、体幹は胸椎棘突起および腸骨で固定した。 先端直径が5-10μmのwood合成封入微小ガラス電極を橋吻側の上小脳脚腹内側部の青班複合体を目標にして刺入し、30-50μA,0.2msec.20Hzの短形波を5秒間加え、排尿が生じる部位に電極を固定した。続いて、膀胱内圧、尿道括約筋EMG同時記録法による下部尿路機能の検討を行なった。すなわち、生理的食塩水を膀胱内に注入して膀胱および尿道の反応を観察すると生理的食塩水の膀胱内注入に対して膀胱収縮とそれと協調した尿道の活動が生じ、排尿が起こった。膀胱容量は4.9±2.6ml,収縮圧は22.3±8.0cm【H_2】Oであった。次に、膀胱容量を膀胱収縮が生じる直前の容量に設定して橋の微小電気刺激を行なうと、膀胱収縮と尿道括約筋の抑制反応が生じ、排尿が起こった。この時の収縮圧は22.5±7.9cm【H_2】Oであった。排尿が生じた部位に直流通電を行ない、微小破壊巣を作製した後、脳幹を取り出して、10%ホルマリンで固定して、50μmの凍結切片として、刺激部位を固定すると微小破壊巣の部位は青班核αに相当した。 本研究は青斑核αに存在する排尿中枢が排出時の膀胱と尿道との相反性活動に重要な部位であることを明らかにするものである。
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