目的:今回の実験は勃起のメカニスを解明するために陰茎の血管系とその支配神経について行なわれた。 方法:イヌの内腸骨動脈よりメルコックス樹脂を注入して陰茎の血管鋳型を作製し走査電顕で観察した。VIPはPAP法で染色した。 結果および考察 1。動脈:陰茎海綿体および尿道海綿体(主として球部)へ入った動脈は、分枝して螺行動脈となっていた。螺行動脈は海綿体洞の間を蛇行し、海綿体洞へと連っていた。螺行動脈が海綿体洞へ近ずくと血管鋳型に大きな舟窩状の陥凹が現われきた。これがポルスターである。ポルスターは海綿体洞へ入る血流の調節を行っていると考えられている。ポルスターの存在している部位の動脈壁にはVIP含有神経線維が密に存在していた。この所見はポルスターを含む動脈壁の弛緩、つまり勃起の発現はVIPによって若起される可能性を示唆している。 2。海綿体洞:海綿体洞は陰茎海綿体と尿道海綿体では配列や密度が異なっていた。陰茎海綿体では主として縦方向に配列していたが、背側では密に腹側は粗であった。尿道海綿体では球部の配列により主として縦方向であったが、それより遠位部では(亀頭を除いて)尿道と平行に走っていた。勃起時には海綿体、特に尿道海綿体の体積増加が著しかった。 3。静脈:陰茎海綿体を去る静脈は海綿体背部で海綿体洞より起こり、海綿体の表面を這うように走った後ほぼ直角に向きを変えて去っていた。海綿体の表面を走る静脈は勃起時海綿体と白膜との間で圧平されていた。つまり閉鎖系の存在を示唆している。このことは最近行った陰茎の血流動態に関する実験結果とも一致している。
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