研究概要 |
1.前立腺の炎症に伴う前立腺液の生化学的性状の変化について, 初年度より引続いて, 亜鉛, ph, IgA, リゾチームを対象に検討を続けている. 特に亜鉛濃度は治療効果に良く相関し, 治療により前立腺液中の白血球数が正常化し, 臨床症状の改善が認められた症例においては亜鉛濃度の上昇が認められた. また前立腺液採取困難例について前立腺マッサージ後の尿(VB3)を正確に採取することにより, ある程度前立腺液の生化学的変化を類推することは可能であり, 本疾患の診断に有用と思われた. 2.また一方の知見である前立腺炎に伴う, 前立腺液pHのアルカリ化については, すでにアルカリ環境下で抗菌力が低下しない薬剤をいくつか選択し(erythromycin, new quinolones, etc), 従来から頻用されている薬剤とその薬剤を比較している. しかし現在までのerythromycinによる臨床検討では必ずしも, 高い有効立は得られず, 併用薬剤(重曹等)を使用することも検討中である. 3.いわゆる非細菌性前立腺炎の原因微生物と考えられるクラミジア, ウレアプラズマの前立腺液からの検出は当初より検討している. しかし各種の前処理を行ってもその検出率は低く, また検出例でも経尿道的に採取する方法では尿道由来の一般細菌やクラミジア, ウレアプラズマのcontaminationが大きな問題となって来る. このため側溝を前立腺部に一致させ直接前立腺液を採取する3way ballon catheterを試作して検討した. このカテーテルは使用方法がやや煩雑であるが, 一般細菌を含めてクラミジア, ウレアプラズマの contaminationは大幅に減少し, また前立腺液の採取率も向上した. 今後さらに改良を加えていく予定である.
|