研究概要 |
1.前立腺組織における検討:手術的に得られた約30例の前立腺肥大症組織を用いて、細胞分画法により細胞質成分と核分画の塩抽出液に分画し、各々の分画におけるandrogen receptor(AR)と活性型androgenである5α-dihydrotestosterone(DHT)を測定した。その結果、核分画の塩抽出液(salt extractable Traction)におけるAR量と、組織全体に含まれるDHT量が、比較的良好な正の相関を示すことが認められ、salt extractable AR量はその組織のandrogen依存性を表現する有用な示標であると考えられた。この成績は西日本泌尿器科49巻1号に掲載予定である。一方、核分画をさらに調整することにより、salt extractable Tractionとsalt resistant Traction(matrix bound Traction)に分けて検討を加えているが、これらの分画調整の過程における各種薬剤(protease阻害,phosphatase阻害,SH基保護剤)の影響が認められ、塩抽出画分ARとmatrix bound AR量にかなり変動があり、確かにmatrix bound ARはかなりの量が存在していることは間違いないが、その意義については今後の検討で症例追加が必要であると思われる。 2.外陰部皮膚由来の培養Tibroblastにおける検討:実験に供することが出来るだけの培養細胞系を一時期に多数検体得られることが、細胞の性格上(正常細胞であり継代に限りがあるため)実際上不可能であるため、現在は基礎実験として、一定の細胞数になった時点で継代を中止して、cell stocker system内に凍結保存し、再培養にて一定検体数を実験に供することが可能かどうかをチェックしている現状である。従って細胞分画法を用いての純化核分画の採取迄のプロセスにまで到達している段階であり、そのAR測定についての検討は次年度の課題としたいと考えている。
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