子宮内膜癌細胞(HHUA)から、6チオグアニン耐性株(6-TG^rHHUA)及びネオマイシン耐性株(6-TG^r-Neo^rHHUA)を作成した。これらの細胞を用いることにより子宮内膜癌化機構解明へのアプローチを行った。1)6-TG^rHHUA×HF(ヒト正常線維芽細胞)との融合実験:本組み合せによる細胞融合の結果得られた雑種細胞では線維芽細胞様の紡錘状形態は失われ、敷石状配列を伴うHHUA類似の細胞形態を示した。軟寒天培地でのコロニー形成率は、継代培養後に得られた3クローン共に、親細胞(95/1000)より低値を示した。ヌードマウスでの造腫瘍性も3クローンでは抑制された。これらの結果からヒト正常細胞には、子宮内膜癌の腫瘍性を抑制する形質が存在することが示唆された。 2)微小核融合による単一ヒト染色体の移入:微小核融合を用いてDSV2-neo遺伝子を含む正常ヒト由来単一染色体をHHUA細胞に移入することにより、子宮内膜癌細胞の造腫瘍性および増殖特性の変化を検討した。その結果 (1)ヌードマウスでの造腫瘍性は、1、6、9番染色体移入クローンで抑制されること (2)軟寒天培地上での足場非依存性増殖は1、6、9、11番染色体移入クローンで抑制されること、 (3)1番染色体移入クローンのみ、細胞増殖及び細胞飽和密度の低下が認められること、等が観察された。さらに1番染色体移入クローンは、多核で消失していた。癌抑制遺伝子群の導入による造腫瘍性の抑制および増殖特性の変化は、単一染色体の移入によって生ずるのではなく、複数の種数の染色体が関与することが推測された。しかし1番染色体移入クローンで観察された造腫瘍性の完全な消失及び細胞形態の変化は、子宮内膜癌抑制に機能する重要な遺伝子群が1番染色体上に存在することを強く示唆する。
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