研究概要 |
哺乳類の受精卵の呼吸代謝を無侵襲で計測する目的で各磁気共鳴法(NMR)を用いて, 受精周辺期の卵の呼吸代謝の基礎的検討を行った. すなわち, 家兎の胚盤胞においてNMR信号検出が可能となった成績を基に, ^<31>P-NMRのスペクトル検出を試み, 受精卵の障害なきpH測定の試みを目指した. 1.微小電極法による初期胚細織内酸素濃度をゴールデンハムスターを用いて検討した. その結果, 微小電極法で初めて受精前後, 初期卵割卵の細胞内PO_2測定に成功し, 初期卵割卵なり卵細胞内PO_2が上昇することを認めこの時期より呼吸代謝活性が賦活化されている可能性が示唆された. 2.胚盤胞の薬物代謝を検討し, 性ステロイドホルモンの取り込みを認めた. 3.NMRによる胚盤胞の代謝の基礎的検討を行った. その結果, 胚盤胞で哺乳動物としては初めて, 無機リンのスペクトルを検出することができた. 4.哺乳動物受精卵よりNMR信号を検出するためにはその質量が不十分なため, 試料の集積が必要となり, そのため凍結融解技術が必要となった. 今回, 未受精卵および受精卵の生存性の高い凍結融解法を確立することに成功した. 5.微小電極法による細胞内pH測定を用いて, 受精前後の卵細胞内呼吸代謝を検討した. その結果受精卵の細胞内pH W未受精卵に比し, 有意に上昇していることが確認された. 6.^<31>P-NMRによる排卵周辺期の家兎卵巣におけるエネルギー代謝を検討したHCG投与後30分から16時間の間にα-, β-, α-ATP, Pi, DMEの計測が可能となり, 今後排卵周辺期における^<31>P-NMRによる細胞内pH測定の可能性が明らかとなった. 以上に記した研究成果から, 所期の目的の実験系の確立に関する基礎的な部分は達成されたと思われる. 今後, これらの成績をふまえ, 受精卵の無侵襲的な計測の検討を加えていく必要がある. その成績も徐々に蓄積されており近い将来公表予定である.
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