研究概要 |
1.研究分担者の中村は, 昭和61年12月1日より10か月間, 米国カリフォルニア大学において文部省在外研究員として, 胎児溶血性疾患に関する研究を行ってきた. (1)羊水中のビリルビン様物質の代謝経路は一元的でなく, 母体側からの排泄の可能性もある. (2)重症貧血胎児の直接的治療法である, 超音波監視下での経皮的臍帯静脈穿刺後に直接輸血する, Ultrasound-quided Fetal Intravessel Transfusion(UFIT)に参加し, その手技を改良した. 2.Flowcytometryを用いて, 母体感作の原因となる経胎盤出血の検索を行った. (1)成人血のHb-F陽性率は0.2%以下, 臍帯血は98%以上であり, それらの希釈液の陽性率も計算値に一致していた. (2)妊娠37週以降の妊婦のHb-F陽性率は1.78±1.32%と, 経胎盤出血が少なからず存在することが示された. 3.Rh陰性妊産婦の感作予防を徹底するために, 次の3点の実施を提唱したい. (1)全妊婦(分娩を予定していない場合も含めて)について, 妊娠初期にD因子を正しく判定する. (2)分娩の際だけでなく, 流早産や人工妊娠中絶後, 子宮外妊娠の手術後などにも, D陰性婦人に対してはRhIGを使用する. (3)妊娠中にも母体感作の恐れはあるので, 妊娠28週および経胎盤出血の危険がある場合にも, RhIGを使用することが望ましい.
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