研究概要 |
1).胎仔腎機能とその調節機構の検討。 胎外哺育ヤギ胎仔を用い、胎仔血液の分析,膀胱カテーテルの留置による胎仔尿の採取分析を行なった。その結果、以下の点が明らかになった。(1)胎仔の尿排泄量は胎仔の循環動態によって大きく変動する。(2)それとともに尿の電解質組成・浸透圧も大きく変動する。(3)胎仔の水電解質代謝に胎仔腎が関与している可能性が示唆される。(4)胎仔の腎機能の評価を行なうためには、胎仔循環動態を正確に把握してこれを安定化せしめ、循環と腎の関係を明らかにする必要がある。 2).胎仔尿と羊水中諸物質 羊水と胎仔との間には、胎仔の飲水と排尿を介しての水と物質の循環がある。胎仔の水電解質出納を2〜7日間継時的に追跡したところ、飲水によって胎仔にとりこまれる羊水量がこれまでの予測値より多く、尿量よりも多いことが示された。このことは、我々の実験系に特異的である可能性もあるが、レニン-アンギオテンシン系には飲水行動を誘起する作用があることが知られており、胎仔の水電解質代謝に胎仔の内分泌系の変化が関与していることを強く示唆していると考えられた。 3).61年度は上記実験を集中的に行なったため、胎仔腎へのmicropuncture法等のアプローチは行なわなかった。 4).現在、胎仔血中のレニン,アルドステロン,バソプレシンの変化と循環動態の関連についての検討を進めており、これによって胎仔の水電解質代謝と循環動態の関連については明らかにできることが期待される。 5).上記の内容の一部を日本新生児学会総会において発表した。
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