研究概要 |
転移性絨毛癌株GCH-1(m)はヒト非転移性絨毛癌株GCH-1より樹立された。これは【10^7】個の細胞をヌードマウスに皮下移植すると100%の確立で肺に転移巣をつくる。転移には数多くの因子が関与するとされているが我々は転移性の癌と非転移性の癌とでは、遺伝子レベルにも何らかの違いがある筈と考え、以下の実験を行った。GCH-1(m)よりDNAを抽出し、DEAE-dextran法でGCH-1にgene transferを行った。形質転換されたGCH-1をヌードマウスに皮下移植するとヌードマウスにはGCH-1(m)を移植した場合と同様肺転移が見られた。同様の方法でGCH-1(m)から抽出されたDNAをヒト非転移性絨毛癌株TAK-Nとヒト卵巣癌株TYK-nuにgene transferし、ヌードマウスに移植した。TAK-Nでは肺転移巣を形成するようになったが、TYK-nuでは全く肺転移巣を作らず、組織特異性の存在が推察された。又、GCH-1,GCH-1(m)及びGCH-1(m)のDNAをGCH-1に形質転換して得られ肺転移能を持つLT-1について、class【I】HLA,class【II】HLA,H-ras oncogeneのexpressionをNorthern hybnclization法により検索した。その結果class【I】HLA m RNAでは3株とも転写していたが、class【II】HLA m RNAではGCH-1が転写しているのに、GCH-1(m),LT-1では転写していなかった。H-rasに関してはGCH-1がH-ras m RNAを転写しておらず、GCH-1(m)とLT-1では転写していた。1つの遺伝子変化により転移能を獲得するということは現在の所考えにくいが、転移因子に関するgeneのクローニングを62年度は進める計画である。現時点での我々の結果ではclass【II】HLA及びH-ras oncogeneのexpressionが転移すると思われるので、これらのgeneを形質転換することにより転移能の獲得の強弱を見るつもりである。α-IFNはclass【II】HLAのexpressionを増強するのでα-IFNが転移を抑制することが出来るか否かも検討したい。
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