1.目的:妊娠の出発点である着床の機序をin vitro実験系によって解明することを目的とした。 2.材料と方法:自然交尾後6【1/2】日目の雌家兎より摘出した胞胚と同時期の子宮内膜組織をin vitroで混合培養し、trophoblastと子宮内膜細胞の接着過程を経時的に固定しepon包埋標本を作成し、光顕的ならびに電顕的に観察した。 3.結果:以下のような成績がえられた。 (1)胞胚の子宮内膜細胞への付着は培養開始後3時間で認められ、以後時間の経過とともに付着率は上昇し24時間後では50%、48時間後では67%、60時間後には80%に達した。 (2)細胞を囲む透明帯の菲薄化、断裂は、trophoblastと子宮内膜細胞の双方の作用によるものであり、trophoblastの産生する物質、子宮内膜細胞の細胞質突起の透明帯内進入や産生する物質が関与していることが明らかとなった。 (3)子宮内膜細胞は胞胚に近接する部に著明なcollagen fibrilの産生を伴う複数の局所的隆起構造を形成することを認め、in Viroにおいても同様にtrophoblastと子宮内膜細胞の接着部で著しいcollagenの産生がみられることから、子宮内膜細胞由来のcollagenが着床においてtrophoblastの接着、増殖を促す作用を有することが明らかにされた。 4.結語と今後の研究の展開: 着床は胞胚と子宮内膜細胞の密接な相互作用によって成立することが明らかとなり、とくに子宮内膜細胞の産生するcollagenが両者の接着に重要な意義を有することがわかった。今後はfibronectin、lamininなどの接着因子につき研究を展開する計画である。
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