研究概要 |
不妊婦人の血中に存在する精子不動化抗体の対応抗原を以下の方法で同定した。 (1)原因不明不妊婦人380名について精子不動化試験を行い、精子不動化抗体保有血清45検体を採集した。このうちもっとも高い抗体価を示した血清を用いて精子不動化抗体対応抗原の同定を試みた。 (2)健常人精子(湿重量10.2g)を洗浄、ホモジナイズし、ショ糖比重遠沈法にて細胞膜を分離し、非イオン化洗剤Rene×30にて溶解した。 (3)Lens culinaris hemagglutinin(LCH)親和クロマトグラフによって、LCH親和性のある糖蛋白を分離した。回収量は、1.12【A_(280)】単位であった。 (4)この糖蛋白の一部(0.C4【A_(280)】単位)を【^(125)I】で標識し、Bto-Gel A1.5Mカラム(13×800mm)でゲル瀘過した。 (5)ゲル瀘過各分画と前述(1)の精子不動化抗体との直接結合反応を行ったところ、その結合曲線は単峰性を描いた。ピークの結合率は12%であった。一方対照として用いた正常ヒト血清は、ゲル瀘過各分画とは有意の結合を示さなかった。 (6)精子不動化抗体と結合した【^(125)I】標識精子細胞膜抗原の分子性状をSDSポリアクリルアミドヂル電気泳動によって検討したところ、この抗原は非還元状態で分子量約15,000の単一ポリペプチドと推定された。 (7)この【^(125)I】標識精子抗原を、精子不動化試験陽性婦人20名、精子不動化試験陰性婦人10名、妊婦10名、未婚婦人10名および正常男性10名の血清と反応させたところ、高い抗体価を有する精子不動化血清2検体とのみ強い結合を示した。したがって本研究において同定した精子細胞膜糖蛋白は、精子不動化抗体の対応抗原の一つと考えられた。
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