研究概要 |
不妊婦人の血中に存在する精子不動化抗体の対応抗原の1つを同定するとともに、ヒト精子に対する数種のマウスモノクローナル抗体を作製し、その受精障害機序を検討した。また精子不動化抗体を迅速かつ正確に測定出来る系を開発するため、酵素免疫測定法、精子不動化試験などの各測定系を比較検討し、以下の結果を得た。 1.原因不明不妊婦人380名について精子不動化試験を行い、精子不動化抗体保有血清45検体を採集した。このうちもっとも高い抗体価を示した血清を用いて精子不動化抗体対応抗原の同定を行った。 2.同定された精子細胞膜抗原はlens culinaris hemagglutininに親和性を有する分子量約15,000の単一ポリペプタイドであり、その抗原エピトープは蛋白部分と推定された。 3.この抗原に対する抗体は、精子不動化抗体を有する不妊婦人血清20検体中2検体に認められた。この検体は血中のみならず卵胞液、腹水中にも認められた。 4.この抗体は精子不動化作用だけでなく、卵と精子の結合障害作用も有していた。 5.ヒト精子に対するマウスモノクローナル抗体10種を作製したが、そのうち2種が精子不動化作用を有していた。 6.抗精子抗体の測定系として、酵素免疫測定法と精子不動化試験の比較検討を行ったが、各測定系における陽性検出率は5〜30%と一定せず、その反応パターンも多様性がみられた。
|