研究概要 |
乳腺組織は妊娠、分娩、産褥期を通じてホルモン還境の変化により微妙に調節を受け乳腺上皮の増殖・分化が誘起される。個々のホルモンの乳腺上皮の増殖に対する影響を器官培養系を用いて検討したところ、【^3H】-thymidineのDNAへの取り込みはインスリン(5ug/ml)、EGF(10ng/ml)によって促進されコーチゾルによって抑制された。プロラクチン(5μg/ml)と生理的濃度の17β-estradiol(【E_2】),Progesterone(Prog)はin vitro系において影響を及ぼさなかった。思春期・妊娠時の乳腺の発育に関してin vivoでは、従来より【E_2】が導管、Prog.が腺胞の増殖を促進するとされているが、その明らかな根拠は乏しい。本年度は、【E_2】とProg.のマウス乳腺に対する【E_2】とProg.の作用様式を検討した。【C_3】H/HeNの処女マウスを生后9週で卵巣摘除し、【E_2】(3μg)またはProg(lmg)または【E_2】+Progを週2回、1ケ月間投与し、各グループの乳腺の形態をwholemountを作製して観察した。また乳腺の器官培養を行い、これらのホルモン処置が乳腺組織のDNA蓄積や合成速度、崩壊速度にどのような影響を及ぼすかを測定した。whole mountでははProg.単独処置でも導管・腺胞の発育が認められた。正常及び卵巣摘除後【E_2】,Prog,【E_2】+Prog.処置マウスの乳腺のDNA蓄積は72時間観察したところ同じレベルであるが、Pulse実験では去勢したものとProg.処置したものは、各時点における【^3H】-thymidineの取り込みが正常マウスのものより遅延していた。一方、Pulse chase実験ではProg.処置したものが、DNAの崩壊が最も遅延していた。以上の成績より、【E_2】,Prog.はin vivoにおいて乳腺上皮に作用する事、従来のように【E_2】とProg.の乳腺における作用部位の個別化はできない事、Prog.による乳腺上皮増殖促進作用は、DNAの代謝回転の遅延による作用である事などが示唆された。
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