研究概要 |
マウス乳腺の培養系においてカゼイン及びαーラクトアルブミンの定量法を確立し、乳腺細胞の分化とコラーゲンの生合成の役割について検討を加えた。1.マウス乳を集め塩析、ゲル3過によりカゼインを純化し、これを家兎に免疫して抗カゼイン血清を得た。培養乳腺組織中の合成されたカゼインを二重抗体法により測定した。2.ラクトース合成能を測定することによりαーラクトアルブミンを定量した。3.培養乳腺組織からコラーゲンを抽出純化し、SDS-PAGEによって分析すると、typeIとtypeIIIのコラーゲンが主な成分であることが明らかとなった。4.prolineのanalogであるLACAは乳腺組織におけるコラーゲンの生合成を75%抑制した。またLACA添加によってcasein,α-lactalbuminの合成はそれぞれ77%、70%の抑制を受けたが、総蛋白合成に関する抑制はミルク蛋白合成の抑制より小さく、23%にすぎなかった。さらにLACAはcasein,α-lactalbuminに対応するそれぞれのmRNA活性を79%,76%に抑制した。5.LACAによるこれらの合成抑制効果はLACAと同量のprolineを同時に加えて培養することにより消失し、コラーゲン、カゼイン、α-lactalbuminの合成能は元どおりに回復した。6.lysyl oxidaseの阻害剤であり、コラーゲン分子のcross-linking形成を阻害するβ-APNはOー160μg/mlの濃度で検討したところ、どの濃度においてもcasein、α-lactalbumin合成上影響を与えなかった。 以上のことより、乳腺上皮のホルモン依存性分化の過程において、乳腺上皮がその機能を発現するには、乳腺組織におけるコラーゲン生合成が不可欠の条件であることが明らかになった。またコラーゲン分子の形成があれば、必ずしも分子のcross-linkingは必要でないことも示唆された。
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