研究概要 |
1.正常月経周期を有する婦人の子宮内膜を採取し、一部はwhole tissueとして、残りはKingらの方法に準じてcollagenase digestionにより腺細胞と間質細胞に分離し、増殖期ならびに分泌期子宮内膜における解糖系律速酵素(He-xokinase,Phosphofruktokinase,およびPyruvate kinase)を生化学的測定法により検討中であるが、まだ現時点では例数が少なく明確な結論は下せない。 2.アロキサン糖尿病の家兎を用い、子宮内膜における解糖系の律速酵素活性について検討した。Hexokinase,Phosphofructokinase活性は糖尿病群で有意の増加を示したが、Pyruvate kinase活性には変化を認めなかった。また糖尿病群の子宮内膜組織にズダン【III】染色により脂質の沈着を認めた。以上の結果より糖尿病家兎子宮内膜ではglucoseが解糖系で十分に利用されず、途中から脂質代謝系に流出し、そのためglucoseより生じるエネルギー産生に異常が生じている可能性が推察された。 3.Anti-progesterone剤であるRU-486の着床阻害作用の機序を解明する目的で、RU-486をラット着床期に投与し、子宮内膜におけるglycogen代謝について検討した。RU-486の投与はラット着床を阻害し、子宮内膜におけるGlycogenphosphorylase活性の増加によると考えられるGlycogen量の低下が認められた。以上の結果、RU-486の着床阻害作用は子宮内膜における糖代謝調節への影響によって起こっている可能性が示唆された。またRU-486のこの作用は、同時に測定した血清ProgesteroneおよびEstradiol値より子宮内膜への直接作用のみならず黄体機能を介した作用による可能性も示唆された。
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