研究概要 |
1.転移性子宮内膜癌の治療にメドロオキシプロゲステロンアセトート(MPA)が用いられるが, その治療効果はプロゲステロンレセプターを介する以外に直接グロマチン機能に影響を及ぼしもたらされる. この効果にrRNAの形成に関与するDNA周囲の特異蛋白である核小体オーガナイザー域はMPA投与により組織型が分化度の高いほど分散していたものが正常内膜でみられるように集合してくる. したがってMPAは癌細胞の分化誘導を起こすことを示した. 2.従来, ステロイド受容体は細胞質に存在すると考えられてきたが, 現在では核に存在することが組織化学的に示されてきた. 血中のエストラジオールー17β(E_2)が核に到達するには細胞質を通過するものと考えられる. そこで細胞質のE_2の局在を抗体を用いた組織化学的にみると, 組織分化度と無関係に存在し, しかもMPAによってE_2の局在が減少することを明らかにした. したがって細胞質にもE_2と結合する蛋白が存在することが考えられる. 3.従来, エストロゲンはその個有の受容体を持っていると考えられたが, エストロゲンであるエストラジオールー17β(E_2), エストリオール(E_3)はウサギ子宮で全く異なった結合部位を持っていることを結合特異性, 解離定数の面より明らかにした. したがってE_2とE_3は異なった生物学的効果を発揮するものと考えられた. また生体にE_2やE_3を投与すると, 用量, 機関依存性に両者の結合部位が増加し, 両者の生物学的効果発現には相互作用が存在していることが考えられる.
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