性ステロイド効果は女性性殖器やそれ以外の臓器にも発揮される。この効果はレセプターを介してもたらされるが、逆にこのレセプターの面より性ステロイド効果を増量することができる可能性がある。そこで性ステロイドレセプターの生物学的意義と臨床応用に関連して検討した結果を連らねる。 1.(1)酢酸メドロオキシプロゲステロン(MPA)が内膜癌のコロニー形成を抑制するのに必要な濃度はプロゲステロンレセプター(PR)濃度をはるかに越える。したがってMPAの内膜癌治療効果はPRを介する以外に直接クロマチン機能に影響を及ぼし得られる。(2)MPAと抗癌剤の併用添加で相加的にコロニー形成が抑制され、抗癌剤内分泌療法が期待できる。(3)MPAにより内膜癌の核小体オーガナイザー域が正常内膜のそれに近い状態になり、このことからMPAは癌細胞の分化誘導を起すといえる。(4)MPAにより細胞質のエストラジオールー17β(E_2)の局在が減少することから、細胞質にもE_2作用と関連する結合蛋白が存在する。(5)内膜癌株と内膜癌由来の間質細胞との混合培養で、プロゲステロン(P)によるサイミジンの取り込みの減少が促進し、間質も抗腫瘍作用を役割を果たしている。2.ヒト妊娠脱落膜のステロイドレセプターの検討からエストロゲンは脱落質の増殖とPによるプロラクチン産生に重要である。3.女性性殖器で、アンドロゲンはエストロゲン作用をコントロールし、特に間質に相対的に多い、そのレセプターを介して作用していると考えられる。4.エストロゲンであるE_2やエストリオール(E_3)のレセプターや生物学的効果は独立して存在し、互いに協同作用をしている。これらは生体内に広く存在してい、主にE_2によりコントロールされる。抗エストロゲン剤の作用はE_3のレセプターを介している可能性が強い。
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