研究概要 |
今年度の研究としては、(1)妊娠経過に伴う羊水中浸透圧・ADH及び胎児尿産生量の変遷推移、(2)胎児尿産生量と新生児Hct,新生児第一尿中ADHとの関係を求めた。妊娠週数の進行と共に羊水中浸透圧は減少し、30週での275mOsm/Kgが、38週では278Osm/Kgとなり、γ=-0.33(P<0.01)の相関を得た。また、妊娠週数と羊水中ADHとはγ=-0.407(P<0.01)と負の相関が、そして胎児尿産生量とはγ=0.26(P<0.05)と正の相関を得た。羊水中のADHは胎児血中ADHと相関する事が報告されており、妊娠伴なう胎児尿量の増加は、胎児血中ADHの低下が考えられる。そこで予定帝王切開時の臍帯血Hctを測定し、手術直前に測定した胎児尿量、胎児血中ADHの代りとなりうる新生児第一尿中ADHを測定した。その結果、臍帯血中Hctと胎児尿産生量とはγ=-0.32(P<0.05)と負の相関を、臍帯血Hctと尿中ADHとはγ=0.37(P<0.05)と正の相関を、尿中ADHと尿産生量はγ=-0.45(P<0.05)と負の相関を示した。つまり臍帯血Hctの変動即ち胎児循環動態の変化が胎児のADH分泌を促し胎児尿を調節していると考えられる。その結果、羊水中のADH濃度や浸透圧にも影響を及ぼすものと考えられる。しかし本研究の問題点は予定帝王切開のため陣痛による影響はみられず、胎内での状態を反映していると考えられるが臍帯血Hctでもって胎児の循環動態を表現したこと、次に胎児血ADHの代りに新生児尿中ADHを測定したことである。つまり血中ADHα尿中ADH,胎児期尿=新生児第一尿の関係がなりたつと想定した点である。現在胎盤循環動態を支配する一因子としての母体心拍出量を測定し、胎児尿産生量との検討を行っている。
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