今年度はカナマイシン(KM)で難聴を起こしたモルモットを用いて、蝸牛の電気刺激により誘発されたCompound APについて検討した。 方法 KM300mg/kgを約2週間投与し、プライエル反射にて難聴のスクリーニングを行った。急性実験を行い、刺激電極(銀線)を正円窓膜に置き、対極は頸筋に置いた。電気刺激には10kHzの正弦波一周期を定電流回路を用いて行った。記録電極は2MKC1を入れたガラス管で、小脳を吸引した後の蝸牛神経束内Compound APで判定した。難聴の程度はtone burstによるCompound APで判定した。一部のモルモットでは電顕にて有毛細胞の障害を確かめた。 結果 1.難聴の程度に拘わらず、潜時1msec以下の最初の陰性波(N_1)は記録され、その人出力曲線は正常なモルモットと比較しても同じであった。 2.潜時が2msec以下の陰性波N_2は難聴が高度である時、刺激強度をより強くしなければ誘発されない。 3.しかし、難聴の程度が小さくとも誘発された(N_2)の入出力曲線は正常なモルモットで得られる、刺激が強くなると潜時は短くなり、振幅が大きくなるといった傾向がなくなった。 4.電顕的に観察したモルモットでは、外有毛細胞の障害が確認された。 5.KM皮下注射した後にエタクリン酸を投与する方法に変えて、もっと効率よく難聴を起こしており、現在データをさらに集積中である。
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