研究概要 |
昭和61年度の動物実験の成果をふまえ, ヒト聴性脳幹反応の周波数同調曲線の記録方法を確立した. これにより正常耳, 異常耳で各周波数毎の周波数同調曲線を測定した. その結果, 次のような事実が判明した. 1.ヒトでも動物と同様, 聴性脳幹反応の陽性緩徐波を指標にすることにより, ある程度の周波数特異的検査を他覚的に行うことができる. しかし, その周波数同調は純音を指標とする純音聴力検査(自覚的検査)と比較すると著しくわるい. 2.刺激音の立ち上がり時間が短くなる程, 音圧が大きくなる程, また周波数が低くなる程, 周波数同調曲線のQ_<10>値は小さくなる. 3.刺激音のパワースペクトラムにより, 周波数同調曲線の最大遮閉周波数が変化する. 4.異常耳の周波数同調曲線は, 正常耳のそれと比較して最大遮閉周波数Q_<10>値が大きく異なる. 聴力図を反映したものと予想される. 5.聴性脳幹反応の陽性緩徐波を指標とした他覚的聴力検査と純音聴力検査の結果は, 特に異常耳の場合に著しく異なる. 上で述べたような周波数同調曲線を反映したものである. 以上の結果をもとに異常耳の他覚的聴力検査の判定を確かなものにする方法(ソフトウェア)を作製中である. これら結果は一括して近く日本耳鼻咽喉科学会会報に報告する予定である.
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