研究概要 |
1.病的嚥下機構の病態生理に関する研究 正常例ならびに嚥下障害例の嚥下圧をマイクロチップ圧カトランスデューサを用いて体内圧トランスデューサ法にて測定した。その結果、嚥下圧値より求められる嚥下圧曲線は5型に分類された。【I】型は正常型,【II】型は圧亢進型で【II】a型は食道入口部,【II】b型は下咽頭部の圧亢進型,【III】型は圧低下型で【III】a型は下咽頭部,【III】b型は軟口蓋部の圧低下を示す型である。これらの分類法は障害部位の診断ばかりでなく治療法の決定にも有用な情報を提供するものである。すなわち、【II】型では輪状咽頭筋切断術の絶対的適応,【III】型では相対的適応となる。次に マイクロチップ圧力トランスデューサの2つのセンサー(間隔3Cm)を利用して、嚥下圧波の伝搬速度を検討した。その結果、正常例では中咽頭部で伝搬速度が最も速いことが分った。【II】型の圧亢進型では伝搬速度については正常例と比して平均値において差は認められなかったが偏差は大きかった。この意義については次年度に検討を行う予定である。 2.嚥下障害モデル動物に関する研究 嚥下障害モデル動物として鉄欠乏性動物を家兎を用いて作成した。その方法は除鉄飼料による飼育,鉄キレート剤の筋注によった。かかる条件下で4ヵ月間飼育すると典型的な鉄欠乏性貧血を呈した動物が作成された。正常家兎と鉄欠乏家兎において嚥下関与筋の酵素染色法を行い、筋繊維のタイプ分類,各タイプの筋繊維径の測定,筋繊維の酵素染色能などについて検討を行った。その結果、両群間のタイプ分類,繊維径には差がみられなかったが、鉄欠乏家兎の筋繊維の酵素染色能に異常がみられた。この意義、とくに病態生理機能については次年度に引き続いて検討を行う予定である。
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