研究概要 |
本研究は、miniture transducer を用いて、嚥下時の咽頭内圧(嚥下圧)を測定し臨床的応用を考えることにあった。以下本年度の研究計画にそって、その実績を報告する。 1)呼吸運動様式と嚥下圧曲線 正常者:呼吸様式は嚥下運動と密接な関係がある。人は常に一定の呼吸運動に従って嚥下運動をしている。正常者では90%以上の確率で呼気時に嚥下運動が観察された。 病的症例:嚥下障害の症例では呼気時ではなく、主として吸気時に嚥下が生じることが観察された。また、気管切開を行ない呼吸路を変化させると、嚥下と呼吸のリズムが相互の関連を失うことも観察された。このことは誤嚥症例のリハビリテーションを考える時に有益である。 2)嚥下圧の伝播速度の測定 このテーマは全く新しい試みであるが、4chの嚥下圧測定器(それぞれのminiture transducerの間隔を1.5cmとした)を用いて、各々のチャンネルから得られる嚥下圧から咽頭・頚部食道の嚥下圧波形の伝播速度を、自動的に測定するプログラムを作製した。測定結果から上・中・下咽頭,頚部食道への嚥下圧波形の伝播速度は一定ではなく、喉頭蓋谷付近が最も遅いことが観察された。この研究は嚥下圧波形の伝播速度と食塊の通過速度の関係を明らかにし、嚥下障害患者の治療法を考える起点となろう。 3)頭頚部疾患者の術後誤嚥と嚥下圧波形との関係に関しては、手術的に切除し咽頭の解剖学的構築の欠損が生じると、その部位の嚥下圧の低下が観察された。今後、この嚥下圧低下の程度と嚥下障害の程度との相関について詳細に観察する予定であるる。
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