研究概要 |
Interleukin-2(IL-2)による免疫療法はIL-2の全身投与と, IL-2によってin vitroで機能が増強した細胞の移入(adoptive immunotherapy)を併用するのが有効性が高いことで知られている. 移入細胞として, 従来末梢血単核細胞をIL-2で刺激して誘導されるlymphokine activated killer(LAK)細胞が用いられていた. 一方, 最近は腫瘍に浸潤した細胞(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の機能解析がすすみつつある. 今回, 頭頚部がん患者から分離したTIL細胞の増殖性, 細胞表面マーカー抗腫瘍活性をLAK細胞と比較検討した. 方法:頭頚部がん患者より手術時, 腫瘍組織を採取し, 細切した後培養フラスクに固着させた. 翌日浮遊する細胞をTIL細胞として取り出し, IL-2(TGP-3:武田薬品)加培養液で培養した(lymphokine activated-TIL:LA-TIL). 固着した細胞はそのまま培養を継続し, 自己腫瘍細胞の樹立を試みた. また同時に末梢血より分離した末梢血単核細胞をIL-2加培養液内で培養し, LAK細胞を誘導した. 培養方法として添加血清を自己血清とヒト新鮮AB血清とで比較検討した. また培養日数, IL-2濃度も変えてその抗腫瘍活性を測定した. さらにIL-2培養前後での細胞のphenotypeの変動を見るため, 各種のモノクローナル抗体を用いて二重染色によってサブセットを同定した. 結果:血清の比較ではヒト新鮮血清が自己血清に比べて3〜4倍細胞増殖が良く, 抗腫瘍活性の誘導でも同様のことが観察された. IL-2の濃度を変えた比較実験では, LA-TILはLAKに比較し, IL-2がやや高濃度で誘導されやすいことが判明した. LA-TILはLAKと比較し自己腫瘍細胞に対しより強い抗腫瘍活性を示し, そのサブセットは, CD8^+CD11^+細胞, すなわち細胞傷害性T細胞であることが示唆された. 一方LAK細胞はCD16^+細胞で, NK細胞の一部であることが観察された.
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