めまい・平衡障害患者に対する平衡機能訓練法の手技、適応および評価法の検討を本研究の目的とした。急性内耳障害によるめまい・平衡障害の治療過程で、内耳因石器・半規管の反復刺激が治療促進に役立つことは、多くの臨床例での経験、内耳破壊動物での運動訓練の実験報告などから推測される。これはヒトの幼児・小児、青年の生長過程で、繰り返しの運動訓練により、直立・歩行が可能となり、更にスポーツや職業訓練で高度の平衡機能が獲得されることからも支持される。 研究対象:従来の報告にある外傷、手術、薬物による内耳損傷例から適応範囲を拡大し、各種末梢性前庭障害、中枢障害、心因性疾患も含めて、平衡機能改善のための運動訓練を検討した。 1986ー1987年度研究:1)めまい、自律神経症状の尺度化;臨床経過ならびに治療効果の判定のため嘔吐を伴う激しい自発性めまいを10.めまいなしを0とし、そ間を10段階に分類した。また安静度、訓練度を数値化した。2)コンピュータ利用;MSーD05、N88ーBasicで作成したプログラムでめまい症例の自覚症状、検査所見の経時的変化を含むデータベースを完成した。メニエール病のめまい発作間隔、聴力域値を治療前後で統計的に判定した。 1987ー1988年度研究;自主的運動訓練法を前庭神経炎症例に実施し、コントロールの同疾患での運動訓練を施行しなかった群に比し、一側性jumbling現象消失迄の期間を短縮出来た。理学療法士の協力による運動訓練を末梢性前庭障害、中枢性障害延べ26例に実施し、19例、73%に改善を認めた。 文献的考察と報告書作成:内耳反復刺激、平衡運動訓練関連の28文献を総括し、訓練法手技、適応、評価法、結果についてまとめた。第47回日本平衡神経科学会に研究の一部を報告した。報告書完成後別に提出する。
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