研究概要 |
本年度は音刺激によるABR・MLC・SVRを指標として意識障害・脳死の判定のための研究と電気刺激によるABR・MLC・SVRのための予備実験をネコを用いて行った。 1.ICUに入院した患者のうち急性期の意識障害患者および、脳死と臨床的に見なされる患者について、研究した。その結果、従来の脳死という概念は、脳幹死という概念にとって代わるべきであるという結論に達した。すなわち、ABRに異常波形が生じた場合、ほとんど救命されないからである。聴性誘発反応による生命予後の予測は、ABR,MLC,SVRのすべてが記録されると100%救命され、ABR,MLCだけでは90%救命され、ABRだけが正常であれば60%の救命率である。しかし、脳幹障害型のABRでは10%,ABRが無反応であれば、救命された例はなかった。ABRが無反応であった例は脳幹死と呼んで良いと考えられる。 2.神経病理学的研究:ICUで脳死を判定され、その後死亡した症例は5例ある。そのうち1例は側頭骨・脳の病理標本は完成した。他の4例は現在、プロセス中である。 3.クリップ型外耳道蝸電図電極の開発。脳幹死をさらに調べるためには蝸電図の記録が必要である。従来の針電極は不便であるため、先端にAg/Clの銀ボール電極をつけた、クリップ型蝸電図電極を作成し、記録を始めた。 4.電気刺激によるABR。ネコの正円窓に置いた電極を用いて、麻酔下のABR記録を行った。その結果、自然刺激の【II】【III】【IV】波に相当する波形が得られることがわかった。患者では、斜電極を用いる方法とクリップ型蝸電図電極を用いて行う方法で、電気刺激を与え、両者の特性を比較検討を始めた。
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