研究概要 |
リンパ球は鼻粘膜上皮層に遊走し、粘膜表面から侵入する異物に対し、免疫学的生体防御反応を起すと考えられる。異物を抗原とし、鼻アレルギー鼻粘膜リンパ球の動態を非アレルギーを対照に研究した。 当科外来を訪れた鼻アレルギー患者57人、対照10人の鼻粘膜上皮層をスクラッチ法で採取し、凍結切片を作り、オーソミューン染色用キットおよびモノクロナール抗体【B_7】を用いて、OKT4,OKT8,OKT11,【B_7】の染色を行った。染色後陽性細胞をカウントした。得られた結果は以下の通りである。 1.アレルギー群は対照群に比し、OKT4,OKT8,OKT11,【B_7】陽性細胞は増加していたが、OKT4/T8,OKT11/【B_7】は差がなかった。 2.リンパ球のサブセットに年齢差はなく、上皮層好酸球数とも無関係であったが、患者の重症度、上皮層好塩基性細胞数とは正の相関があった。 3.患者免疫療法で症状改善群は未治療群,免疫療法無効群に比しいずれのサブセットも少なかった。 4.抗原による誘発反応10分後にすでに増加するが、反応陰性群ではほぼ不変であった。 鼻アレルギー鼻粘膜に抗原刺激により上皮層リンパ球は増加し、鼻症状の強さと相関する。リンパ球数は上皮層好塩基性細胞とも関係があり、鼻アレルギー発症のメカニズムに重要な役割を演ずると推察される。しかしリンパ球のサブセットに特別な関係はみられなかった。発症の主役である上皮層好塩基性細胞の上皮内遊走に対するリンパ球の作用について研究を進めている。
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